コラム
パワーラックの使い方|セーフティバーの高さの決め方とマナー
パワーラックは、スクワットやベンチプレスで1人でも限界近くまで挑戦できるようにする道具です。ただし、それはセーフティバーを正しい高さに合わせたときだけです。高さが合っていないセーフティバーは、ないのと同じです。
この記事では、パワーラックの部品の役割、スクワットとベンチプレスそれぞれの高さの決め方、潰れたとき(重さに負けて挙げられなくなったとき)の逃げ方、ジムで気をつけたいマナーの順に説明します。
パワーラックの部品と役割
| 部品 | 役割 | 合わせ方 |
|---|---|---|
| フック(Jフック) | セットの前後にバーを掛けておく | バーを外すとき・戻すときに、背伸びも、深くかがむこともせずに済む高さ |
| セーフティバー(セーフティピン) | 挙げられなくなったバーを受け止める | いつもの動きでは当たらず、潰れたときに受け止められる高さ |
| カラー(クリップ) | プレートがバーの端へずれないように留める | バーベル種目では毎回付ける(セーフティバーに落としたときのずれも防げる) |
柱に等間隔の穴が開いていて、フックとセーフティバーはその穴に差し込んで高さを変えます。ジムによっては、セーフティバーの代わりにベルト(ストラップ)で受け止める型や、左右に張り出した腕(セーフティアーム/スポッターアーム)で受け止める型もあります。どれも役割は同じです。
フックとセーフティバーの高さの決め方
スクワット
フック:胸の真ん中〜脇の下あたり。膝を少し曲げて担ぎ、膝を伸ばすとバーが外れる高さ
セーフティバー:いつもの深さでしゃがんでも当たらない、いちばん高い穴(いちばん深くしゃがんだときのバーより数cm下)
ベンチプレス(ラック内で行う場合)
フック:ベンチに寝た状態で、肘をほぼ伸ばしたまま外せる高さ
セーフティバー:胸を張ってバーを胸に付けた位置より少し下。胸の張りをゆるめると、バーがセーフティバーに乗る高さ
高さは体格としゃがむ深さで変わるので、数字ではなく、空のバー(プレートを付けていないバー)で確かめて決めます。
- ▸ 立つ位置:バーを外したら1〜2歩下がるだけにして、左右の柱のあいだ(セーフティバーの真上にバーが来る位置)でしゃがむ。ラックの外へ歩き出すと、潰れてもバーがセーフティバーに乗らない
- ▸ スクワット:空のバーで、いつもの深さまでしゃがむ。バーがセーフティバーに当たるならセーフティバーを1つ下の穴に、すき間が大きすぎるなら1つ上の穴に移す。いつもの深さで当たらない、いちばん高い穴が正解
- ▸ ベンチプレス:空のバーを胸に付け、胸の張りをゆるめて息を吐く。そのときバーがセーフティバーに乗り、胸から重さが抜ける高さが正解。ベンチを置く位置を決めてからセーフティバーを合わせ、ベンチを動かしたら合わせ直す。ちょうどいい穴がないときは、低いほうの穴で妥協せず、限界近くのセットは補助者がいるときだけにする
合わせた穴の番号は、ほかの人が使ったあとでも同じ高さにすぐ戻せるようにメモしておくと楽です。左右で穴がずれていないか、セーフティバーとフックが奥まで差し込まれ、ロック(抜け止めのピン)が掛かっているかも、毎回確かめてください。
バーの戻し方
戻すときは、前に歩いてバーを両方の柱に当ててから、まっすぐ下ろしてフックに乗せます。フックを目で探しながら下ろすと、片側だけフックに乗らずに外れることがあります。疲れているセットの最後ほど、ここは丁寧に行ってください。
潰れたときの逃げ方
セーフティバーは、潰れたときにバーを置く場所です。挙げられないと思ったら、無理に粘らずに置いてください。
- ▸ スクワット:胸を起こし、バーを握ったまま、まっすぐ腰を落としてセーフティバーに乗せる。上体が前に倒れたまま粘らない。バーが止まったら、さらに腰を落として肩をバーの下から抜き、前に出る
- ▸ ベンチプレス:バーを首や顔の上ではなく胸の上まで下ろし、胸の張りをゆるめてセーフティバーに乗せる。乗るまで手を離さない。バーが止まったら、頭のほうへ体をずらして抜け出す(足のほうへずれると、バーが首や顔の上を通るため)
練習として、空のバーで一度わざと潰れてみるのがおすすめです。本番で初めて逃げ方を試すより、どこにバーが乗るかを先に体で覚えておくほうが、いざというときに落ち着いて動けます。
セーフティバーがなく、補助者もいない台で、限界近くのベンチプレスやスクワットをするのはやめてください。そもそも1RM(1回だけ挙げられる最大の重さ)をわざわざ測る必要はなく、普段のセットは余裕を残した重さで組めます。詳しくは5×5・3×10の重量の決め方にあります。
プレートとカラーの付け方
- ▸ 左右交互に付ける:片側に2枚続けて付けると、反対側が跳ね上がってバーがフックから落ちることがある。1枚ずつ左右交互に
- ▸ 重いプレートを内側に:大きいプレートを先に付け、小さいプレートを外側に
- ▸ カラーを付ける:動いているうちにプレートが外側へずれることがある。左右の重さが変わると危ないので、バーベル種目では毎回留める
- ▸ 外すときも左右交互に:片側だけ全部外すと、残った側の重さでバーが落ちることがある
ジムで気をつけたいマナー
- ▸ 使い終わったらプレートを片付ける:バーに付けたまま離れると、次の人が外すところから始めることになる
- ▸ ラックでしかできない種目に使う:ラックの数は少ないことが多い。カールのようにラックがなくてもできる種目は、混んでいる時間には別の場所で行う
- ▸ 混んでいたら交代で使う:5×5(5回×5セット)の休憩は3〜5分と長いので、待っている人がいたら、休憩のあいだに使ってもらうよう声をかける(ジムに時間の上限があるならそれに従う)。交代したあとは、自分のセットの前にフックとセーフティバーの高さを必ず確かめ直す。メモしておいた穴の番号がここで役に立つ
- ▸ タオルやボトルで場所取りしない:使わない時間にラックを押さえておくのは、待っている人にとくに嫌がられる
- ▸ ベンチは使ったら拭く:ベンチに寝て行う種目は汗が残りやすい
- ▸ ジムのルールを先に確かめる:チョークの使用、利用時間の上限、デッドリフトでバーを床に落としてよいかは、ジムによって違う
マシンで10回前後をくり返すときの休憩は1〜2分ほどですが、5×5のような重いセットは3〜5分休むのが一般的です。そのぶん、ラックを長く使うことになります。マシン中心のメニューの回り方はジム初心者が最初にやるべきマシン5選にまとめています。
筆者(筋トレ歴15年・フィジーク大会入賞)の場合
私のスクワットは、ベンチプレスと同じ120kgで止まっています。スクワットの平均は何kg?にも書いたとおり、ベンチプレスは補助者がそばに立てば支えてもらえますが、スクワットは人が後ろから支えるのが難しく、潰れたときの逃げ場を自分で用意しないといけない種目です。セーフティバーの高さを自分で合わせておかないと、限界まで追い込めません。私のスクワットが止まっている理由も、正直に言えばそこだと思っています。
毎回限界まで行く必要はありません。ただ、重さを上げた日に「潰れても大丈夫」と思えるかどうかで、最後の1回に踏み込めるかが変わります。高さを合わせる数十秒は、重量を伸ばすための準備の一部だと考えてください。
よくある質問
セーフティバーにバーを当てると、ラックが傷みませんか?
潰れたときにバーを置くための部品なので、そこに置くのは正しい使い方です。ただし、毎回のセットでバーをセーフティバーに打ち付けるような使い方は、音も大きく周りの迷惑になります。いつもの動きで当たるなら、セーフティバーの位置が高すぎます。
ジムにパワーラックがない場合は?
ベンチプレス台にセーフティバーが付いていないなら、限界近くのセットは補助者がいるときだけにしてください。1人のときは、決めた回数を終えても余裕が残る重さにします。スクワットは、セーフティバーのない台で限界を試さないことが大前提です。
デッドリフトもパワーラックの中でやるべきですか?
デッドリフトは床から引く種目なので、ラックの中でやる必要はありません。混んでいる時間にラックを使うと、スクワットやベンチプレスをしたい人が待つことになります。デッドリフト用の台(プラットフォーム)があるなら、そちらを使ってください。
まとめ
- ▸ セーフティバーはいつもの動きでは当たらず、潰れたときに受け止められる高さ。空のバーで確かめ、差し込みとロックも毎回確かめる
- ▸ スクワットはいちばん深い位置のバーより少し下、ベンチプレスは胸の張りをゆるめるとバーが乗る高さ
- ▸ スクワットは柱のあいだでしゃがむ。潰れたら粘らず、胸を起こしたままセーフティバーに置く。空のバーで一度練習しておく
- ▸ プレートは1枚ずつ左右交互に付け外しし、カラーで留める
- ▸ 使い終わったら片付ける。混んでいたら交代で使い、交代後は高さを確かめ直す
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この記事を書いた人
motsu
20代で体重90kg超の運動不足から一念発起。試行錯誤の末に大会入賞レベルまで体を変えた実体験をもとに発信しています。